アースデイ東京ユース(EDY)は、日本各地の中学生から大学生までが参加するアースデイ東京のユースコミュニティ。アースデイ東京のバックアップのもと、自分たちがやってみたいSDGsに関連したアクションを、企業や行政と連携して社会実装することで「新しいつながり、新しい当たり前」を創る団体です。
昨年、アースデイ東京とEDYは、全国の高校生による環境アイデアコンペティション「アースデイ東京ユースSDGsアワード2022」を開催。アワードをきっかけに全国からさらにメンバーも増えて、活動の幅を広げています。EDY設立者で初代代表の辻田創(つじた・そう)さんに伺いながら、その活動を紹介します。
※Vol.2の記事もあわせてご覧ください。
お話を伺ったのは……辻田創さん・大学4年生(取材時)
辻田創(つじた・そう)さん
アースデイ東京ユース(EDY)・初代代表。神戸市外国語大学4年(取材時)。アースデイである4月22日生まれ。2020年冬からアースデイ東京に参加して、2021年11月にEDY設立。東京五輪食品ロス削減プロジェクトの立ち上げ、模擬国連NY大会参加などの活動を経て現在は、「地球」「平和」「幸せ」について学びながら次世代リーダーを育てる「School of the World」の代表も務める。
全国で多様な活動をしているユースが集合
――アースデイ東京ユース(EDY)について、まずは簡単に教えてもらえますか。
辻田 2021年11月に活動をスタートしたEDYは、アースデイ東京のユースコミュニティで、全国各地から小学生から大学生までが参加して通年で活動しています。一番多いメンバーの層は高校生と大学生ですね。普段から定例ミーティングやイベント運営を行う「ユースメンバー」には12都府県から30名が参加しています。
それぞれに異なる学生団体に所属していて、自団体の代表を務めている人も多い。貧困、食、教育、ゴミ、生物多様性など、SDGsでいえば10項目にわたる分野に取り組む、すごく多様なメンバーが集まるコミュニティになっています。
また、この30名のユースのメンバー以外にも、「アースデイ東京ユースサポーターズ」と呼ばれる学生団体、NPO、NGO、インフルエンサーやさまざまな個人の人たちがいて、広くネットワークをつくりながら活動しています。
――多様なメンバーの学生たちがどのようにEDYに集まったのですか。
辻田 4月に代々木公園で開催するアースデイ東京と並んで、EDYの通年活動のなかでも大きなイベントが、「アースデイ東京ユースSDGsアワード」という、高校生による環境アイデアコンペティションです。昨年は9月~11月にかけて開催して、全国から10団体・総勢130名が参加しました。
これはアースデイ東京との共催でユースメンバーが実際の企画や運営なども行ったのですが、このアワードに学生団体として参加したことをきっかけに、「自分もユースに入って活動してみたい」とEDYのメンバーになってくれた学生たちが多いんです。
――「アースデイ東京ユースSDGsアワード」についてもう少し教えてください。
辻田 アースデイ東京ユースSDGsアワード2022(主催:アースデイ東京、共催:アースデイ東京ユース、協力:公益財団法人電通育英会)は、次世代リーダーの育成を目的として開催した全国の高校生によるアイデアコンペティションです。2022年9月~11月の3カ月間かけて、国連、脱プラ、気候危機などの分野で世界で活躍するプロフェッショナルによる計5回のオンラインレクチャーを実施。学校の授業では得られないインプットや学びを得る機会をつくりました。
さらに、インプットだけでなく自分たちで実践することも大切なことなので、フィールドワークの機会もつくりました。それが「#リフィルアクション」です。アースデイ東京で実施していたリフィル大作戦と連動して、マイボトルへのリフィルや無料の給水スタンド、詰め替えアクションなどの写真を学生たちにインスタグラムに投稿してもらい、その投稿数が総合評価のボーナスポイントになる仕組みをつくりました。
その間にもオンラインでユースと学生団体との交流やディスカッションなども重ねて、最終的には参加した10の学生団体から「2030年SDGsを達成するために私たちが身近にできるアクション」というテーマに沿ったアイデアを、12月21日にプレゼン発表してもらいました。
――どんなチームが参加されたのですか。
辻田 首都圏だけでなく、北陸や九州などさまざまな地域から10団体が参加しました。みなさん、普段から地域で活動をしている学生団体なのですが、取り組んでいる活動の内容は脱プラなどの環境問題、SDGs、ビーチクリーンやカンボジアの医療支援などさまざまです。
プレゼン発表では、フェアトレードを普及させる「フェアトレード・キッチン」の開催やカンボジアの子どもたちがきれいな水を使えるようにろ過機を寄付するプロジェクトなど、さまざまなアイデアが出てきました。審査の結果、総合優勝したのは新潟南魚沼市で環境活動を行う「minamirai」という学生団体です。
minamirai は、SDGsを若い人たちに知ってもらう機会をつくるために、いまブームになっている「センイルパーティ」(韓国風の誕生日パーティ)をサステナブルに行うためのパッケージを提案してくれました。総合優勝したチームは、東京・代々木公園で4月に行われるアースデイ東京2023に招待されてブース出展ができるので、今回のアワードで発表してくれた「センイルパーティ」のアイデアを実現してもらう予定です。
【アースデイ東京ユースSDGsアワード2022】
●主催:アースデイ東京、共催:アースデイ東京ユース、協力:公益財団法人電通育英会
●期間:2022年9月21日~11月2日(オンラインレクチャー)、12月21日(プレゼン発表会)
●参加団体:学生医療支援団体 GRAPHIS、学生団体 ACT、ユネスコ部、Progress One、minamirai、高校生ボランティア団体リレート、福岡 United Children、未来守、大学生団体「DI缶(アルミ缶)」、中高生団体 Nexus
総合優勝:minamirai
プレゼン賞:未来守、ユネスコ部
課題発見力賞: DI缶
ネクストアクション賞:福岡UC
観客賞: minamirai
地球温暖化防止全国ネット賞: DI缶
真面目なだけじゃなく、楽しく、格好よく
――ユースメンバーでSDGsアワードを運営するにあたって、何か意識していたことはありますか。
辻田 そうですね。なるべく「真面目になりすぎないこと」でしょうか。社会を変えたいというときに、真面目なだけ、正論だけでは通じない世の中だと思っているので、エンタメ性、楽しさや面白さ、格好よさも大事な気がしているんです。
そこで、3か月の間にはもちろん真面目なディスカッションもしましたが、それだけじゃなくてオンラインでハロウィンパーティをするなどの「ファンアクティビティ」も企画して、リラックスした雰囲気のなかでそれぞれのもつ課題意識を共有する時間をつくりました。
このアワードが終わったあとに、参加した学生団体のなかから「すごく楽しかったし、自分も何かやりたいと思ったから、ユースメンバーに入りたい」という人が多くいて、仲間を増やすことができたのはすごくうれしかったです。
――2022年は、「アースデイ東京ユースSDGsアワード」を軸に、EDYの活動が広がった年だったそうですが、ほかにはどんな活動がありますか。
辻田 11月には、「生物多様性」「海洋汚染」「クライメイトリテラシー」という3つのトピックで、世界中で活躍する実践者や同世代のユースを集めて、基調講演やワークショップ、パネルディスカッションなどを実施する「アースデイグローバルサミット」にも参加しました。また、今年1月には、環境省と有機農業に関するイベントも共催しています。現在は、4月に開催されるアースデイ東京2023に向けて準備を進めているところです。
2022年の主な活動
●2022年4月 アースデイ東京2022
・フードドライブ、エシカルファッションなどに挑戦
●2022年9月~ SDGsアワード2022 共催
・全国10の学生団体、総勢130名が参加して、計5回のオンラインレクチャーを実施。「2030年SDGs達成するために私たちが身近にできるアクション」をテーマに学生団体によるプレゼン発表を行った
●2022年11月 アースデイグローバルサミット2022 共催
・「生物多様性」「海洋汚染」「クライメイトリテラシー」という3つのトピックで、世界中で活躍する実践者や同世代のユースを集めて、基調講演やワークショップ、パネルディスカッションなどを実施
●2023年1月 環境省 森里川海アンバサダープロジェクト 共催
・森里川海アンバサダーとともに「オーガニックな学生生活を実現するために必要な取り組み」を考える。EDYのメンバーが農家へのアンケート調査やインタビューを実施
「誰か」ではなく「自分たち」で未来を創る
――そもそも、2021年11月に辻田さんがEDYを設立したきっかけは何だったのでしょうか。
辻田 僕は関西の大学に通っていたのですが、休学して東京で食品ロス削減などのプロジェクトに取り組んでいたことがありました。そのときのつながりで2020年の冬からアースデイ東京の実行委員会に参加するようになったんです。最初は僕が唯一の学生メンバーでした。
アースデイ東京は20年以上の歴史がありますが、コロナの影響も受けていて新しい在り方を探る過渡期でもあるように感じたんです。よりよいアースデイ東京を創っていくためにも、もっと同世代の仲間を増やしたいと思ってEDYを立ち上げました。
――メンバーのみなさんは、どんな思いでEDYに参加されているのですか。
辻田 「誰か」に決められた未来ではなく、自分たちで明るい未来を創りたいからではないでしょうか。このままでは自分たちの未来が限られたものになってしまうという危機感があって、できる範囲だけでも、いまから自分たちでアクションを起こしていきたいと考えている学生はたくさんいると思います。そうした思いが、「アースデイ東京ユースSDGsアワード」のプレゼンなども現れていると思います。
アースデイ東京としては、毎年4月に行われる東京・代々木公園でのイベント開催がアースデイ東京として一番盛り上がるときだと思うのですが、でもやっぱり「毎日がアースデイ」と言われるように、毎日地球のことを考えて行動しないといけない、という問題意識があります。ですから、EDYでは通年で何かしらの活動をしていきます。
試行錯誤や成功体験を重ねていける場
――EDYの意義をどうのように感じていますか?
辻田 アースデイ東京は20年以上続いてきた歴史と社会的信用があって、これまでに培ってきた幅広いネットワークがあります。そうしたなかで、アースデイ東京のバックアップやリソースを生かして、EDYが「何かやりたい」と思っている若者と社会をつなげる場になる大きなポテンシャルを持っていると感じています。
僕自身、大学に入ってから熱意ややりたいことはいっぱいあるのに、リソースやノウハウが足りなかったり、コミュニケーションがうまくいかなかったりして、なかなか実現できないという葛藤を抱えていた時期がありました。同じような学生って、たくさんいるんじゃないかなと思います。
設立してから1年半しかたっていないので、EDYもまだ手探りで進んでいるフェーズではあるのですが、だからこそ自分たちで立てたいろいろな仮説を試せる、実験できる場でもあるような気がします。失敗する経験も大事だけど、若いうちに成功体験を増やしていくことで、それが自信になったり、次の挑戦につながったりしますよね。EDYというコミュニティが、みんなでいっしょに成長していける場になったらいいと思っています。
――辻田さんは、この春で大学を卒業されて、EDYの代表も交代になります。これからのEDYに期待することは何でしょうか。
辻田 社会に対してもそうだし、アースデイ東京の実行委員会に対しても、「こういうことが重要だと私たちは考えている」という意見を若者がしっかり発信していくことが重要です。ユースが声をあげることで、大人が逆に気づかされることもたくさんあるのではないでしょうか。
「学生だから仕方ない」のではなく、「学生だけども」同じ目線で話していくんだという姿勢を大事にしてほしいと思います。そういう意味では、「アースデイ東京ユースSDGsアワード」のような場は、インプットだけでなく、自分たちの思いや活動のアウトプットの仕方を学び、実践するためにも大切だなと思います。
――どうもありがとうございました!
アースデイ東京ユースでは、随時新しいメンバーを募集しています。興味をもった方は、ぜひアースデイ東京(@earthdaytokyo)か、アースデイ東京ユース(@earthdaytokyo_youth_)のインスタにDMでご連絡ください!