「地球のことを考え行動する日」をキーワードに、NPO、市民団体、企業、アーティスト、そしてさまざまな個人が分野を越えて集まるアースデイ東京。どんな人たちが、どんな思いで参加しているのでしょうか?
今回は、アースデイ東京の設営準備や撤収ボランティアにたくさんの社員の方々が参加している「株式会社 セールスフォース・ドットコム」(以下セールスフォース)のサステナビリティ&コーポレートリレーションズ シニアディレクター遠藤理恵さんにお話を伺いました。
(トップ写真提供:セールスフォース・ドットコム)
社員135名がアースデイ東京にボランティア参加
――まずは、セールスフォースの会社についてご紹介いただけますか?
遠藤さん:私たちは企業向けのクラウドサービスを提供している会社です。いまから20年前の1999年3月にサンフランシスコで創業しました。インターネットを経由したクラウドで情報を管理するCRM(顧客管理システム)を世界中のあらゆる企業に提供する会社として始まりましたが、いまはCRMを中心に置きながら幅広いビジネスソリューションを提供しています。世界中で約15万社の企業にセールスフォースのサービスをお使いいただいています。
――アースデイ東京への参加は、何がきっかけだったのでしょうか?
遠藤さん:社員がアースデイ東京にボランティアで参加し始めたのは2013年からです。環境問題に関心のある社員数名が自主的にボランティア説明会に参加して、「誰か一緒にやらない?」と社内に声をかけて始まったのがきっかけでした。
最初は小さく始まったのですが、それからアースデイ東京のボランティアに参加する社員がどんどん増えていきました。そして、2018年からは特別協賛という形でより大きな規模で参加させていただいています。昨年は、設営準備3日間、当日2日間、撤収1日の合計6日間で、社員135人が合計1,618時間のボランティア活動をアースデイ東京で行いました。
――135人・1,618時間はすごい数ですね! 社員みなさんのボランティア時間は、どのように把握しているのでしょうか?
遠藤さん:「Volunteerforce」という自社のテクノロジーを使ったアプリがあるんです。どんなボランティア活動があるのかを探したり、参加登録をするときなどに使ったりしています。社員には7日間の社会貢献有給休暇が付与されていて、1年間に56時間のボランティア活動をしようという努力目標があります。でも、これは義務や強制ではありません。
社員はアプリ上で各ボランティア活動にサインアップできるので、誰が何月何日に何時間のボランティアをしたのかが、過去にさかのぼって分かるようになっているんです。このアプリによると、セールスフォースが創業してから20年の間で、世界中の社員が合計で381万時間のボランティア活動をしています。
大切にしているのは「平等」
――セールスフォースでは、就業時間もボランティア活動にあてることができると聞きました。
遠藤さん:セールスフォースでは、創業当初からビジネスと社会貢献を統合したアプローチ「1-1-1モデル」を掲げています。これは、製品の1%、株式の1%、就業時間の1%を利用してコミュニティに貢献するという社会貢献モデルです。社員のボランティアだけでなく、自社のサービスをNPOや教育機関に提供するほか、コミュニティへの資金的な支援なども積極的に行っています。
創業者のマーク・ベニオフは「ビジネスこそが、社会によいインパクトを与えるプラットフォームである」とよく言っていて、私たちが見るべきものはお客様だけではなく「Ohana」(ハワイ語で家族の意味)であるという考え方が会社の文化としてあるんです。私たちにとっての家族は、従業員、お客様、パートナー、私たちが働いて生活するコミュニティのすべての方たちを含んでいます。
私たちが非常に大切にしているコーポレートバリューが四つありますが、それは「信頼」「カスタマーサクセス」「イノベーション」、そして、「平等」です。多様性を受け容れて認めていくようなカルチャーは、これから企業がより成長していくうえでも不可欠で大切なこと。創業当初から社会貢献を熱心に行っているのも、平等な社会をつくるという目標があるからです。そして、この概念はSDGsが掲げる「誰ひとり取り残さない」と同義だと感じています。
2日間で400人の子どもたちが参加!
――アースデイ東京2018では、プログラミング体験のブースを出展されていました。たくさんの子どもたちでにぎわっていましたね。
遠藤さん:昨年は「Hour of Code(アワー・オブ・コード)」という1時間でコードを体験できるプログラムを使いました。子どもから大人まで誰もが簡単にプログラミングを学ぶチャンスを届けるために作られた学習ツールで、「画面の動物がこの迷路を通ってゴールに行くにはどうしたらいいのかな?」といった、楽しみながら取り組めるゲームのようなものです。
普段は、学校などの子どもたちが集まる施設で実施しているのですが、アースデイ東京のように日々の活動とは違う拠点で行うことで、これまで出会えなかった子どもたちにも参加してもらえました。2日間で約400人の子どもたちが参加してくれたんですよ!
お子さんたちがブースを見つけて、「やりたい!」と自分から参加することが多かったようです。2020年から小学校でもプログラミング教育が必修化されるので、保護者の方もとても気になっているようですね。
――アースデイ東京でプログラミング教育体験を行うことの意味についてどう考えていますか?
遠藤さん:アースデイが目指すライフスタイルと、私たちの提供するようなテクノロジーは共存できるものだと思っています。テクノロジーを使うことで社会問題を可視化して解決までの時間を早めることができますし、多くの人をより効率的に巻き込んでいくこともできます。社会課題を解決していくために、テクノロジーをどう上手に生かしていけるのか――そのことを考える最初の一歩になれば嬉しいという思いがあります。
子どものプログラミング教育体験は、「平等」という大切にしている価値のもと、グローバルに展開している社会貢献活動「STEM教育(※)」プログラムの一つでもあります。いま第4次産業革命時代だといわれますが、テクノロジーがどんどん上手に使えていく人と、そこからこぼれてしまう人がいます。そうした格差をなくすための活動でもあります。
※STEM教育:Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、 Mathematics(数学)の4分野を統合した理数系教育のこと。
――ボランティアで参加した社員の方の感想はどうでしたか?
遠藤さん:普段、社員は学校や施設などで教えているので、「アースデイ東京のように青空のもとで子どもたちに最初の体験をさせてあげられたのが嬉しかった」という声がありました。また、「個人としても地球や環境問題についての知識を深めることができ、学びにもなって楽しい」という感想も聞いています。
ボランティアをしている時間以外は、社員それぞれに他のブースを訪ねたり、いろいろな団体の方ともお話をしたりして楽しんでいたようです。今年もたくさんの社員がボランティア参加に手を挙げていて、部署によってはチームで参加するところもあります。みんなとても楽しみにしています。
今年はVRや自転車でのスマホ充電も!
――アースデイ東京2019でのブース出展について教えてください。
遠藤さん:今年は三つ準備しています。一つ目は、昨年のような子ども向けのプログラミング体験です。小さなお子さんでも参加できる「viscuit(ビスケット)」というプログラム言語を使って、自分で描いた海の生き物の動きを指定し、ほかの子どもたちが描いた絵と一緒にスクリーンで泳がせたり、昨年と同じく「Hour of Code」を使って、プログラミングの基礎を学んだりできます。
もう一つは、自転車を漕いでスマホを充電するチャレンジです。多くの人が使っているスマホですが、充電するのにどれくらいのエネルギーが必要なのかが体感できます。
そして、VRを使ってきれいな海のなかを体験してもらいたいと考えています。これは、きれいな海を知っている人は海を汚さないだろうというポジティブ・キャンペーンです。近年、水質汚染やプラスチックごみなど海の環境問題がクローズアップされていますが、この先もきれいな海を残すため、海の生き物が元気でいるためには、どうすればいいのかを考えるきっかけにしてほしいと思っています。
――子どもだけでなく、大人も楽しめそうです。
遠藤さん:ぜひ参加してみてください。この三つはSDGsのゴールでいうと、プログラミング体験は「4:質の高い教育をみんなに」、自転車での充電チャレンジは「7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、海のVR体験は「14:海の豊かさを守ろう」に焦点をあてています。
ブース出展以外でも、アースデイ東京2019の会場で利用されるリユースカップにも協賛していますし、会場設営や撤収にもたくさんの社員がボランティアで参加します。当日は、力仕事も頑張ります(笑)。今年のアースデイ東京でも、たくさんの方にお会いできるのを楽しみしています。
※セールスフォースのブログ「みんなで創った地球の日」もご覧ください