アースデイ東京2017の開催がいよいよ目前に迫ってきました。開催前最後のオープンミーティングでは、今年のテーマ「Lifestyle Shift,NOW!未来を創ろう!」をいかに実現していくか、白熱したトークが展開されました。
前編は、世界的DJであるKyoto Jazz Massiveの沖野修也さんと、アースデイ東京2017の事務局長を務める南兵衛さんの対談。現状を踏まえ、2017年の開催と、アースデイ東京20周年となる3年後の2020年に向けて、前向きな未来が語られました。
●アースデイ東京の現状を見つめ直して。
南兵衛/沖野さんには去年、World Peace Festivalというプログラムで参加いただいたんですけど、それも踏まえたアースデイ東京の印象を教えてください。
沖野/僕はこれまで何度も遊びには行っていたんです。去年はそのWorld Peace Festivalというステージ企画で初めてジョイントさせていただいて。そこで思ったのは「あれ、アースデイ東京の中にいる人の想いって、まだまだ伝えきれていないのかな」ということでした。というのもお客さんとして行っていたときは、ライブを見て、ご飯を食べて、友達としゃべって、「楽しかったな」で終わっていたんですよ。でも実際に事務局や実行委員の人と密にかかわってみて初めて、もっと強烈な想いがあることを知ったんです。
●2020年を視野に。アースデイ東京初の書籍化!?
南兵衛/その後事務局に来てもらった時に沖野さんから出たアイデアが、書籍企画「アースデイ 地球市民」でした。
沖野/こんなにいろんな人が参加されて熱い想いがあるのに、活字化されていないのはもったいないなと思ったんです。「楽しかったな」って家に帰ってから、改めて読んで理解できるものがあれば、浸透力が全然違ってくるのではないかなと。
河村(事務局スタッフ)/アースデイは1970年にアメリカで始まって、2020年に50年を迎えます。またアースデイ東京も2020年は20回目の開催。節目の年である2020年に向けて、今まで関わってきた人のエネルギーを書籍に向けるというのはおもしろいですよね。
●「ユーザーからの脱却」というシフトチェンジの形を創る。
テンダー(客席より)/本を出すにしても、取次と出版っていう組み合わせはもう正直厳しいと思うんですよ。ただ、例えばネットプリントを利用して、読みたい人はコンビニでプリントアウトするという方法もあるかもしれない。それは流通している物にいつか出会うんじゃなくて、自分から読みにいくっていうプロセスの提案で。それこそユーザーから一歩違う場所にいくっていう「シフト」だと思うんだけど。これ、肝ですよ。
沖野/そういう意味では書き手として手を挙げてもらってもいいですよね。単なる読み手から書き手へのシフトチェンジ。
南兵衛/いいですね。アースデイってそもそも誰もがいろんな角度から参加できるという基盤があるんですけど、そういう意味では本にも同じことが言えますよね。
●お客さんとともに創り上げる、新しいイベントの形。
沖野/去年の参院選前に佐藤タイジ君と「選挙にいこう」という曲(『VOTE 4 UR LOVE & FUTURE』佐藤タイジ feat.沖野修也&SEALDs)を創ったんです。集まったいろんな人たちから歌詞のキーワードをいただいて、最終的に佐藤タイジが書き上げた。その作業はすごく新鮮でした。
南兵衛/アーティストのなかには孤独に創作するという人もいると思いますが、沖野さんはそうやってオープンに創り上げることに対してどういうスタンスなんですか?
沖野/僕は職業がDJなのでプレイ中にはしゃべらないですけど、かけた曲に皆さんが反応してそこにまた自分が反応するというコミュニケーションだと思っているんです。あとは、渋谷にあるTHE ROOMというクラブにはステージがないんですけど、お客さんとの境界線がわからなくなる瞬間があって。創り手と聞き手が交ざっていくのはおもしろいし、新しいんじゃないかと思いはじめているところです。
南兵衛/少し目線を変えるとアースデイ東京の会場で約400ブースが公然一帯になっているというのは、お客さんとお店の垣根はかなり少ない状態になっていると思うんです。その象徴としてのステージをどう創っていくかっていうのは、挑戦していきたいですね。
●誰にでも「ライフスタイルシフト」のチャンスはある。
河村/アースデイ東京でライブをやるにしても、来場者の人たちが沖野さんのようなアーティストの想いを受け取って、音楽の力でライフスタイルシフトしてみようという気持ちをつくっていけるかもしれないですよね。
沖野/来ていただく人に伝えたいのは「あ、俺がやってもいいんだ」ということなんです。今回Kyoto Jazz Sextetというバンドで参加するんですけど、僕は楽器が弾けないんですよ。音楽を習ったこともないんですよ。でも曲は僕が書いているんです。どうしているかというと、マイクに鼻歌を吹き込んで、それをプロのミュージシャンに聞かせて曲を創っているんです。だから楽器が弾けなくてもステージに立っていいし、見ている側から演奏する側のシフトチェンジがあり得るということも、今年のアースデイ東京で伝えたいと思っています。
南兵衛/10万人もの人が集まる規模のステージをストレートな社会的テーマで発信できることってなかなかないじゃないですか。沖野さんが言うように、あの会場でアーティストと客席が一体となって1000人規模のパフォーマンスが発生するとか、そんな景色が見られる日がくるようにやっていきたいですね。
沖野修也(Kyoto Jazz Massive)
DJ/作曲家/執筆家/選曲評論家/Tokyo Crossover/Jazz Festival発起人/The Roomプロデューサー。KYOTO JAZZ MASSIVE名義でリリースした「Eclipse」は、英国国営放送BBCラジオZUBBチャートで3週連続No.1の座を日本人として初めて射止めた。これまでDJ/アーティストとして世界35ヶ国140都市に招聘されただけでなく、CNNやBillboard等でも取り上げられた本当の意味で世界標準をクリアできる数少ない日本人音家の一人。ここ数年は、音楽で空間の価値を変える”サウンド・ブランディング”の第一人者として、映画館、ホテル、 銀行、空港、レストラン等の音楽設計を手掛けている。著書に、『DJ 選曲術』や『クラブ・ジャズ入門』、自伝『職業、DJ、25年』等がある。