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保養ツアー「キッズウィークエンド」インタビュー!〜いつか思い出してほしい“子どもに全力で寄り添う大人の姿”。〜

アースデイ東京では2012年からキッズウィークエンドと題し、福島の子どもたち(小・中学生)へのリフレッシュ保養バスツアーを開催。子どもたちは青梅、自由の森、代々木、北杜の4コースに分かれて自然体験プログラムに参加し、アースデイ東京の会場にも訪れています。

今回は、キッズウィークエンドプロジェクトの事務局を務める「NPO法人ポラン広場東京」の佐藤昌紀さんと、代々木コースでの受け入れや会場の放射能測定などに携わっている「こどもみらい測定所」の石丸偉丈さんにお話をうかがいました。

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――キッズウィークエンドが始まった背景を教えてください。

 

佐藤/2011年3月11日に東日本大震災が発生し、その年のアースデイでも混乱のなか、すぐにボランティアセンターを立ち上げて被災地にボランティアを送ったりしていました。2011年の開催後、翌年に向けての話し合いをしていくなかで、原発事故の問題は大きな論点のひとつでした。そこで福島の子どもたちをアースデイ東京に招待しようということになったんです。

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NPO法人ポラン広場東京の事務局長、佐藤昌紀さん。

 

――「ポラン広場東京」がキッズウィークエンドプロジェクトの事務局をされたのはどのような想いからだったのでしょうか。

 

佐藤/「ポラン広場東京」には「地球の家を保つために 〜Earth House Hold」という理念があります。この理念に基づき、事故前から原子力発電や核を許容しないという立場で有機農業を広める活動を続けていました。福島の子どもたちを保養に招待するということは、いわば「地球の家を保つために」という理念と一体の取り組みなのです。

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こどもみらい測定所の代表で、みんなのデータサイト事務局長の石丸偉丈さん。

 

――後にキッズウィークエンドにもかかわる石丸さんは震災後、国分寺市で放射能市民測定所「こどもみらい測定所」を立ち上げていますね。

 

石丸/当時私は地元で、地域や行政の方と組んでガイガーカウンター片手に空間線量を測定したり、子ども全国ネットという会で放射能対策のイベントを開いたりしていました。ただ食品や土壌の放射能量を測ろうと思うとハードルが高く、きちんと測定できる機関に出すには、1検体で15,000円から20,000円もかかってしまいました。そこで2011年12月、1台150万円くらいするベラルーシ製の測定器を2台購入し、雑貨店併設の「こどもみらい測定所」をオープンしました。1台はアースデイ東京で集まった寄付で。そしてもう1台はとりあえず自費を当てました。現在、食品と土壌の放射能量を、1検体3,000円で測っています。またアースデイ東京の会場では2012年からブースを出して、食品や土壌の出張測定所をやっています。

 

――さらにその後、WEB上で放射能測定値を共有する「みんなのデータサイト」でも共同代表を務めていますが、これはどういうサイトなのでしょうか。

 

石丸/市民測定所が各地で増えていくなかで、せっかく測っても共有されていなかったり、データが統合できていないという状態が続いていました。そこでいくつかの市民団体が集まり、2013年9月に各地の市民測定所で集めたデータを集約する「みんなのデータサイト」を公開しました。今では14,000件程度の食品データが集まっています。また、2014年10月から「東日本土壌ベクレル測定プロジェクト」を立ち上げ、17都県を対象に集めた土壌データ3,100件以上を地図上に落とし込んで公開しました。こうした活動をしていることから、キッズウィークエンドで保養の会場となる代々木公園、青梅、北杜の空間放射線量をホットスポットファインダーで測り、土壌も持ち帰って検査を行いました。(※自由の森コースでは、受け入れ先の自由の森学園が測定しています)

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東日本土壌ベクレル測定プロジェクトで集められたデータを元に、汚染度合いをマップ化。さらに減衰率を計算して100年後までの推移を示している。webサイトでは点で示された部分にマウスを当てると、細かなベクレルの数値や場所が表示。詳細な情報をわかりやすく読み取ることができる。

 

――保養の必要性についてはどのようにお考えですか。

 

佐藤/チェルノブイリ事故では、移住や疎開が権利として認められていて、子どもたちは年に30日、国費で保養に行くことができます。それによって体内被曝量が有意に減少し免疫力が回復することがすでに立証されているのです。ですから理想としては年間1ヵ月は汚染のない所で過ごしてほしいのですが、民間ではそこまではなかなかサポートできません。ただ、短期でも年間を通じて積み重ねることで効果は得られます。キッズウィークエンドは2泊3日ですから、それ自体の効果というよりは、保養について考えてもらい、ほかのプログラムに参加するきっかけにしてほしいと思っています。

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――保養というと自然体験が多いイメージがありますが、キッズウィークエンドではいずれのコースの子どもたちもアースデイ東京の会場に遊びに来ることが組み込まれていますね。

 

佐藤/当初は私も含め、自然体験プログラムにしっかり時間をとったほうがいいのではないかという意見もありました。でも終了後、子どもたちの感想文にはアースデイ東京のことが必ず入っているんです。自分たちは保養ツアーで招待されて来たけれど、世界にはいろんな子どもたちがいて、いろんな課題があって、その問題を解決しようとしている大人たちがいる。そういうことをきちんと見ているんです。なかには自分のお小遣いで寄付までしている子もいました。自分の力で見聞きし体験したことが、かけがえのない時間になっているんだということに気づかされました。

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――3.11の事故から6年が経って、全体的な保養の数もかなり減っています。キッズウィークエンドを続ける意義をどこに感じていますか。

 

石丸/保養や放射能対策の活動がなくなるということは、「忘れられていく」という風に捉えられてしまう面があります。だから、我々は忘れていないよ、問題を共有したいと思っているよ、ということを、できる範囲でですが、活動を続けることで伝えていかなくてはいけないと思っています。資金的な厳しさで、我々も規模の縮小は免れないのですが。

佐藤/子どもたちが青年になり、結婚するような年代になるにつれ、きっといろんなことに遭遇すると思うんです。そういうときに、「そういえば自分たちに本気で寄り添ってくれた人たちがいたな」という記憶は、将来もきっとどこかで支えてくれるのではないかなと。それが、キッズウィークエンドを続けている一番の理由です。

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山梨県北杜市にある「みんなのおうち公園 保養の家」。改修中ではあるものの、昨年のキッズウィークエンド夏の開催時には周りにテントを張って宿泊した。

 

――今後のキッズウィークエンドはどのようになっていくのでしょうか。

 

佐藤/1回の保養に招待できる数は限られます。だからいつでも保養に行けて、子どもたちが親や友達と一緒に過ごせるような施設をつくりたいとずっと思っていました。そこで3年前から「ポラン広場東京」とキッズウィークエンドの青梅コースの受け入れを一緒にやってくれている「ブンブンの会」で、山梨県北杜市に物件を借りて改装を進めています。それが「みんなのおうち公園 保養の家」。利用における細かいルールはまだ決められていませんが、寄付金などを集めて限りなく少ない負担で利用してもらえるようにして、誰もが気軽に保養に行ける環境をつくっていきたいと思っています。

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【キッズウィークエンド 運営資金寄付のお願い】

キッズウィークエンド運営資金は、 Lush FunDの助成金、サポーター企業団体の協賛金、子どもたちの参加費、個人・グループ・企業団体からの寄付金でまかなわれてきています。

大型バスのチャーター費、2泊3日の宿泊費と食費で子ども1名につき20,000円の予算が必要です。ご縁ある皆さまのご支援を心からお願いいたします。

※ご寄付は、下記の口座へお振込みください。(手数料はご負担願います)

※振込用紙に「キッズ」とご記入いただくか別途ご連絡をお願いいたします。

 

<口座情報>

城南信用金庫 渋谷支店 普通413213

「アースデイ東京 理事 濱中聡史
(アースデイトウ キョリジ ハマナカサトシ)」